雑誌編集者の日常


■ 第1,2週  ■

 

入社式と新入社員の研修。研修のグループワークはなぜか「砂漠で生き残るのは誰か」などというテーマだった。



■ 第3週  ■


 今週はゴールデンウィークだというのにいきなり大阪に出張にいかされた。Mac業界では恒例のイベントになりつつある大阪iWeekというやつで、雑誌に連載しているライターさんの本の販売をやらされることとなった。当日はサイン会も行われ、150冊を売りさばく予定である。出張に行くのは総編集長、編集長、デスク、他誌の先輩社員、自分という5人のメンバーである。

 さて、出発前の木曜日に販売作戦会議が開かれ、呼び込み担当、会計担当などが決められた。問題はお釣りをどのように用意するかということであったが、総編集長が突如「コンビニ両替作戦」という計画を思いつき、それが実行されることとなった。部長の考えによると小銭は重いから東京から持っていくのも大変だし、ゴールデンウィーク中は銀行で両替するのも無理なので、現地でコンビニにいってガムでも買って、小銭をもらって皆幸せになろう、というものであった。あまりにも唐突なアイディアであったが、誰も意見を差し挟むことができず「いやぁさすが総編集長あははは」という感じで決定してしまった。

 かくして大人5人が大阪の街で両替欲しさにコンビニを徘徊するとう計画が実行に移された。自分は主にコピー機で100円を入れて90円のお釣りを得るという作戦を展開したのだが、コピーするものがないのでしかたなく昼間に買った「関西名物ボンチ揚げ」の箱のコピーを取ることにした。「関西名物ボンチ揚げ」の箱はかなり厚みがあり、コピーを取るたびに「ピカッ!」という感じでコンビニ店内に鈍い光りが広がっていく。せっかくなので濃度などを調節しつつ、10枚のコピーを取る。店内の店員や客からの鋭い視線を感じつつ、10円玉90枚とボンチ揚げの鮮やかなコピー10枚を持って足早にコンビニを後にした。

 その後、総編集長が「そういえばゲーセンって両替機があったよな」などということに気が付き、今度は「ゲーセン両替作戦」という無謀な作戦が展開されることとなった。総編集長の好みはUFOキャッチャーであったので、部下は両替をこなしながらUFOキャッチャーに私財を投じることとなった。大阪のUFOキャッチャーは「くまぷーさん」がブームのようである。サービスの良い店では取り出し口に頭を突っ込んでいるというくまのプーさん人形もあり、その様子は「くまのぷーさん投身自殺」といった感じである。くまのプーさんは体を張って費者にコインを投じるようにさそいをかけているのだ。結局のところ全部で10匹以上のくまのプーさんが捕獲されたのだが、下っ端である自分がその運搬をやらされた。ホテルに帰り、捕獲したくまのプーさんを並べながら、どうやって東京まで持って帰るのか考えると気が遠くなった。

 さて、実際のサイン会では75冊しか本が売れず、前日に調子にのって両替しまくったために5万円もの小銭が発生してしまった。その後取材もそこそこにひたすら小銭の計算をやらされた。東京に帰ってからは家族に大量の「くまのプーさん」および「関西名物ボンチ揚げとそのコピー」を発見され、説明するのに30分ぐらいかかった。





■ 第4週  ■


 ゴールデンウィークも終わり、いやぁな気持ちで出社するといきなりいやあな上司から説教される。「そもそも君は大阪出張で遊びすぎだ」という感じである。休みを潰して大阪に行ったというのにそれはないだろうが。総編集長は出張で俺のことを気に入ってくれたらしいが、それがまた上司の気にさわるらしい。だが、UFOキャッチャーは業務命令として行ったのであり、しかもそこで多くの「くまのプーさん」を捕獲したというのは評価されるべきことではないのか。俺はUFOキャッチャーでベストを尽くし、総編集長の期待に応えただけである。営業部であったら間違いなくグラフの星印が追加され、「いやぁ新人なのにUFOさばきがうまいよ、君」などとほめられて、寿司でも食っているところではないのか。

 さて、今週は秋葉原に行くという取材っぽいことをやった。考えてみると雑誌社にいながら取材にいくというのはこれが初めてだ。ほとんどの記事は外から持ち込まれたものか、ネットで見つけてきたものである。自分の足で探してきたというネタはほとんどない。はっきりいってそんなことをしている時間はないし、必要な記事や紙面を仕上げるだけで時間が無くなってしまう。しかしながら本来的にはどんどん外にいって取材をして、紙面を作っていくべきなのだとは思う。今の職場はそれができていない。結局DTPだとか偉そうなことを言っても全部オフィスの中で完結させてしまうというのは問題があることだ。

 秋葉原では先輩に店を案内されながらいろいろと店の人の話を聞くことができた。オフレコなどというのも結構聞いた。アッ○ルはいろいろと販売店にしばりをかけているらしく、Macの並べ方にもいろいろと注文を付けているらしい。特にiBo○k、iM○cを売れる店というのは限られており、それらの店には「1階にこの様なディスプレイをしなさい」みたいな指導があるらしい。値段はどこで買っても同じだし、ポイントなども対象外となるようだ。そういえばアッ○ルは3月に「液晶iMacを2万円値上げしますぜい」と発表したのだが、5月になった今でも、販売店では値上げ前の価格で売られている。表向きは「各販売店には値上がり前の在庫があるのでまだ値上がりしていない」ということになっているのだが、3月に値上げするといって5月まで在庫があるというのはどう考えてもおかしい。多くのユーザーが3月に値上げと聞いて駆け込みで買ったのだが、未だに値上げしないところを見ると「液晶iMac売れちゃってるし、今値上げしたら売れなくなっちゃうし、値上げ前の在庫ありってことでもうちょっとこの値段でいきますかねぇ」というアッ○ルの姿勢が感じられるのである。まぁ業界きれいなことばかりではない。うちの編集部もきたないオヤジがおおいし、アッ○ルのネタで食わしてもらっているわけだし、人の会社のことは言えないのだな。



■ 第5週  ■


 今週から発表会の取材ができることになった。発表会の形式は様々であるが、でかい企業が主力製品などを発表するときはホテルなどのちゃんとした会場で「どどーん」という感じで会見を開き、その後にパーティなども開かれたりする。記念すべき初取材はカ○オ計算機(株)の新型デジタルカメラの発表会であった。

 会場は浜松町にあるホテルのイベントホール。「お飲物をご用意いたしておりますのでご自由にお取りください」などという感じで、ワイン、コーヒーなどが置いてある。昼間から飲んだくれている取材陣がいるのが目立つ。その後発表会が始まり、広報、常務取締役、開発部長などが登場する。

 まず常務取締役があいさつを始め、「我が社はQVデジタルでコンシューマ向けデジタルカメラ市場を開拓し‥‥」などと同社のデジカメの歴史を延々と語る。この勢いでいくと弥生時代の農耕地開拓の歴史まで語り始めそうである。いい加減に眠くなったところでようやく新製品のカード型デジタルカメラが登場。開発部長が専門用語を交えながら製品のすごさを語る。

「新発売の製品は1秒で起動し、撮影した瞬間の記録が可能、さらに次の撮影まで0.6秒しかかかりません。」
 
ここでなぜか製品のアピールとして「近所の火事」というシーンがスクリーンに映し出される。

「これはたまたま車で通りかかった時に撮影した近所の火事の場面です。」

スクリーンでは近所のぼや風の写真が車内から撮影シーンが写し出される。

「我が社の新製品ですと起動が1秒、次の撮影までが0.6秒ですので火事のシーンが見事にとらえられています!」

確かに生々しい火事の瞬間がとらえられており、比較された他社製品の画像よりも多くの枚数が撮影されている。

「この場合あくまでも大切なのは火事の瞬間を撮影することなのです!」

この場合あくまでも大切なのは消火活動であると思うが、そういう疑問を持ってはいけないらしい。それにしても近所の火事をたまたま撮影したというシーンなのに、なんでまた競合の他社製品のカメラまで持っていたのかということは謎である。その後質疑応答があったのでこの火事はどうなったのか、本当にたまたまデジカメ2台を持って火事の現場を通りかかたのか、近所の火事を自社製品のアピールに使用する際の倫理的な問題とか聞いてみたいような気もしたが、そういう雰囲気ではなかった。

 最後にモデルのお姉さんが登場。会場内をデジカメをもってうねうねと歩く。近くまで歩いてきてくれるのは良いのだが、じっとしてくれないと撮影できない。なんとか製品の撮影をして、広報関係者と名刺交換、サンプル貸し出しの話などをして帰社する。

 それにしてもいろいろとなぞの多い発表会デビューであった‥‥。
 


■ 第6週  ■


どうも最近仕事がやばい。
終電で帰るという日が多いすぎ。
それがおもしろ仕事ならいいけど、ほとんどが「待ち」というか、ほんと生産性悪くて労働時間長くておもしろくない。というか仕事をしているとムカツク。
その上アホなデスクに原稿をチェックしてもらうシステムになっているのだが、アホデスクは1週間たっても原稿を返してくれないので全く仕事が進まない。あげくに帰ってきた原稿にはボロクソ書かれる。

はぁ。なんかここで上にいってもしょうがないし。仕事を覚えなきゃとは思うのだが。早めに見切りをつけるか、3年ぐらいがんばるか。しかしここで仕事覚えても大したことないというか、他では使えないだろうな。




■ 第7,8週  ■


 Appleの新製品を金曜日にもらってしまって、土曜日出社するはめになった。eMacとかいうのだが、要するに初代CRT iMacが進化したようなもんだな。PowerPC G4 700MHzで17インチフラットCRTディスプレイがついて13万9,800円。なかなかお買い得ではある。まぁしかしAppleの製品ばかりみてると金銭感覚が狂いそうだが、14万も出したらDOS/V機ならもっといいものが買えてしまうというのもまた事実。なぜかMacが欲しいけどそれほど予算がなくて、でかいディスプレイとG4が入っているというやつが欲しい人にはおすすめかもしれん。まぁそんなAppleの新製品のために休日を潰してしまうというのはどうなんだろうなぁ。結局雑誌ではAppleさまさまなので、悪口もかけないし。ぶっちゃけたはなし冷却ファンの音がなかりうるさいという欠点があるのだが、そういうことは書いてはいけない。あとディスプレイの角度が妙に急というか、ほぼ垂直に近いので微妙にみにくい。別売のスタンドをつけないとかなり使いづらいかも。付属のスタンドがまたぼったくりで7,500円もするのだが、これを入れると結局15万近いの買い物になってしまうな。まぁしかしCPUがMac的には速いし、ディスプレイでかいし、値段も安いし、それなりに売れそうな商品ではある。

関係ないが使っているキーボードのQ,A,Zがぜんぜん入力できない状態になってしまった。しかたなく妹のMacのキーボードを借りる始末だ。QとZならともかく、Aが入力できないとかなりいたい。
■ 第9週  ■


 やっほう! バカ上司が飛ばされることになったぞ! 業績下降ぎみの雑誌の編集長くせに全く内容を見直さない。やることと言えばただ部下にいちゃもんを付けるだけ。

もっと驚くのは特集とか毎月吟味して決めるべきなのに3ヶ月に一度ぱぱっと2時間ぐらいで決めてしまう。連載の見直しは半年に一度のみ。発行部数などの重要な業績の連絡は部下にはしないので状況を把握できない‥‥などなど、バカ上司のバカぶりを挙げるときりがない。

社内的にもバカぶりがようやく分かったらしく、ついにぶっ飛ぶことになった。やっほう!

これからは少しましな雑誌作りができるかも。新編集長しだいだけど。

関係ないがキーボードはかどをもってひねってみたら入力できるようになった。
Macは奥が深い‥‥。





■ 9.2.2週  ■


久しぶりに休みが取れたのでここまでの編集生活を振り返ってみたい。

(関係ないがやっぱりキーボードはひねっても動きが悪いので新しいのを買ってしまった。)

リーマンになりたくない、というのが自分の目標というか、人とは違った職業で自分なりの味を出して行けたらいいかな、というのが就活の段階で考えていたことだ。将来的には自立して商売したいけど、取り敢えず社会人の経験も必要だし、お金もいるし、どっか就職せねば、というのはあった。

まぁしかし就職してみると失望させられることばかり。毎日14時間近く拘束され、自分の将来の為の勉強はできない。仕事の方も新しく覚えるようなことはあまりなく、純粋な事務職をずーーっとやっている感じだ。一番の不満はバカ上司で、本当にバカで、つぶれかけている雑誌をさらに潰すようなマネばかりしている。少しでも意見しようとすると別室で長々と説教されるし、記事でオリジナリティを出そうとすると潰される。結局のところ自分のやっているバカ編集長のバカ雑誌のバカ記事を作らされているようなものか。

あまりにもバカらしいので人事の課長に相談したら「もうすぐ編集長が替わるから少し様子を見てくれ」と言われた。人事としてもその辺は把握していたらしい。どうにもバカで使い物にならないのに他にやり場もないし、適当な地位も与えてしまったし、処分に困ったままずるずると編集長をやらせていたようだ。

会社の悪いところとして、結果を出せない雑誌でも、編集長を代えないでそのまま休刊を迎えてしまうというところか。業績がわるければトップを代えるのはあたりまえのことだが、会社という組織はなかなかそれができない。まぁとにかく休刊ぎりぎりのところでようやく編集長を代えるとうのは英断だと思う。会社としては初めての試みだという。それぐらいバカさが際だっていたと言うことか。

いずれにしてもサラリーマンになりたくない、などという淡い目標は完全に崩れている。スーツを着ないで好きな服装で会社に行けるというぐらいで、後は普通のサラリーマンの生活だ。むしろ会社に完全に拘束される生活というのはサラリーマン生活を極めているというか、朝から深夜まで事務的な仕事をするというのは完全に会社人間で、それ以外の自分は全くない生活である。

最も世の中自分の好きな仕事をやってる人なんてほとんどいないだろうとは思う。労働時間が長いというのは編集はどこも同じだ。給料貰って働いて居るんだから休みはなくても仕方がないのかもしれない。

しかしオレの人生ってなんだろうとか思ってしまう。このままいくと100%を仕事に捧げるという人生が続くのだろう。しかもその仕事を全然楽しめていない。出てくるのは早く帰りたいとか、もっと休みが欲しいとか、上司がバカだとか、そういう不満ばかりだ。スキルアップもぜんぜん感じない。強いて言えばMacに関するマニアックな知識が付くと言うくらいか。まぁとにかく出版という仕事への幻想は完全に消えた。クリエイティブ系などという呼ぶ人もあるが、95%は事務職だ。自分の発想とかそういう部分を活かせるなどということはあまりない。決まり切ったルーティンをこなす毎日だ。さらにルーティンがはっきりしていればいいのだが、ルーズなルーティンであるというか、新製品や他の人とのからみできちんとした生活を送るということも難しい。結局夜遅くまで会社に拘束される。

労働時間長い、つまらん、スキルアップ無し、上司バカ。辞めるにしては十分な理由はそろっている。周りの人間も仕事を楽しんでいない。

うーむ。どうしたものか。一つのやり方としてはとりあえず休刊までを見届けるということか。いずれにしても今いる雑誌が潰れるのは時間の問題だと思う。雑誌の最期を見届けるというのは貴重な体験ではないか。とりあえず9月ぐらいまでは様子を見る。しかし体が持つかどうか本当に心配と言えば心配。

あるいは今すぐ辞めて別の生き方を探す。体が持たないんじゃしょうがないもんな。給料安くなっても自分の時間が持てるような仕事をやりたい。

ICUとかオーストラリアで学んだのは会社にべったりするこのような生活ではなく、自分のやり方で自分の納得のいくように人生を楽しむことではなかったか。そう思うとやっぱ今の生活は違うんだよな。





■ 第10週  ■


 今週もMacの裏話をしちゃうもんね。Mac好きは知っていることかもしれないが、実は先々週にとんでもない値引き販売が行われた。Mac本体の価格が最大で6万4,000円も値下げされたのだ。通常Macの価格はAppleからしばりが掛かっており、特にiMac、iBookに関してはどこで買っても同じ値段である。iMac/iBookを販売できる店はAppleが限定した店だけで、ディスプレイなどに細かな指示がだされる。

 そのような販売店に関して、Appleは強い権限を持っており「この値段で売るからやってくれ」という指示も簡単に出せる。先々週の値引きもそのような形で行われたが、値下げ分はAppleからのリベートで補われる。6万4,000円だったら6万4,000円分のリベートがAppleから返ってくるという仕組みだ。

 このような事をした背景には、Appleの2002年度第3四半期の販売台数というものがアメリカの方から「日本はこれだけ売りなさい」という指示がアメリカの方からあり、販売台数をとにかく増やすために台数限定のリベート式値引きキャンペーンを行ったわけである。

 ただこういうことをされると独自のルートで仕入れている小売店はかなり困ってしまう。Apple製品はキ○ヤノン販売等の卸しを通じて小売店にやって来る。卸しを通じて小売店もコントロールされる仕組みだ。Appleのコントロール下にない販売店は、独自のルートでMacを仕入れるが、値引きキャンペーンをやられてしまうとリベートが受けられないので、正規販売店より最悪6万円も高い値段で売ることになり、まったく商売にならない。正規販売店に合わせて値引きすると、そっくりその分が赤字となるわけだ。

 まぁこういうしばりのようなもののおかげでApple製品のブランドは守られている部分もある。量販店でたたき売られるパソコンでは他との差別化ができない。しかしながらこういうくだらんコントロールをすることで販売店にも打撃を与え、結局はシェア拡大はできない。シェアが伸びなければ開発に金も回せない。

 さらに悪いことに、Appleは世界どこでも同じ製品ラインナップで売ろうという路線がある。効率的にはよいのかも知れないが、日本のようなでかく、独自の商品が溢れている市場で、アメリカと全く同じ商品構成で勝負しようなどというのは無理がある。NECや富士通、ソニーのパソコンはアメリカでは大したことはないが、日本ではうまいことやっている。そういうところにアメリカ人の好みがもろに反映された商品を持ってきても売れるわけがない。

 売上高やシェア等を考えるとAppleは世界第9位のパソコンメーカーということになるが、その割には影響力というか、存在感あるもんね、という感じの振る舞いをしているし、えらく自己中な商売を展開している感じがする。





■ 第11週  ■


 あまりにもひどい生活が続いているので人事に「辞めたい」といったら「休暇を取って他の部署に異動してはどうか?」と言われた。そんなことできるんですね♪ 入社以来初めてこの会社もいいとこあるじゃんと思った。

 いいかげん仕事が嫌になってきて、体も壊れてきた。毎日14時間働いて終電で帰って自分の時間がなくて土日は疲れ切って寝るか病院に行ってるという生活が続いている。下手すると土日もPowerBookを持ち帰って仕事してるし。自律神経失調症とやらで夜眠れず、動悸息切れ等の症状が出る。薬を飲まないとまともに立ってもいられない。

 世の中何事もポジティブに考えろなどというが、今の状況をポジティブにとらえるというのはマゾだな。「わーいこの不景気な時代に14時間も働けて、毎日終電に乗れて、めったにいけない神経科に通えるなんてマジ幸せ!」というほど俺はバカではない。仕事に全てを奪われては元も子もない。 

 編集どうこういう以前に、職場にはちゃんと月40時間の残業以内で仕事を終わられせることのできるシステムがない。実際の残業は100時間を軽く越えている。しかもバイトは「ライター契約」ということになっており、100時間残業しても全く金は出ない。さんざん編集部でこき使って置いて、「原稿料」という形で給料を払い、残業代を逃れるシステムを取っている。労働監督庁の方がいたら是非乗り込んで幹部職を連行していっていただきたい。「君は正社員だし残業代も出るからいいだろう?」みたいな発言を幹部職が平気でしているが、そもそもこういう発言自体がすでに法律破りを自認している。

 異動の希望を伝えると今度は上司が説得に来た。「どうして僕に相談してくれなかったのかなぁ? 人事に先にいくというのは非常識だよ、君」のような発言をしている。上司がバカで移りたいといっているのに、本人にどのように相談したらいいのだろうか? 失礼ですがあんたバカなんで移らせてください、とか言えばいいのだろうか?

「なんとかここでがんばってくれないかねぇ? 君の才能ならやっていけるんだがねぇ。これからは仕事のシフトも考えるからさぁ」みたいな話である。このオッサンに俺の才能が認められたのは初めてだ。自律神経失調症を高く評価しているのだろうか。それならどんどん失調してやったのに。


 まぁとにかく現場としても数少ない貴重な新人を入れて置いて病気にしてしまってよそに回すというのではメンツが立たない。現場の管理能力のなさを広く社内に露呈してしまうことになる。なんとしても止めたいらしい。だが、このオッサン達につき合うのもつかれたし、仕事はめちゃくちゃだし、異動できるならとっとと異動してやる。


■ 11.2  ■


 出版業界の矛盾

 1.最新システム不用論
 パソコン雑誌を出している会社としては矛盾しているが、現在出している雑誌は1995年ぐらいには完成していたシステムでやっている。雑誌で必要なのはQuarkと呼ばれる組み版をするソフト、あとおなじみのPhotshop、Illustratorといったところか。こういったソフト別に最新のやつが必要ということは全くない。現にQuarkに関しては3.3というやつが未だに現役で、これは1993年に出たソフトである。最近雑誌ではMac OS Xをバカ騒ぎして取り上げているが、実際に雑誌を作る現場ではMac OS Xを必要としていない(というか使えない)。Mac OS X関連の記事を書くときに仕方なく立ち上げるとい程度である。自分たちで使っていないくせに「Mac OS X Q&A大特集!」とか毎号やっているので、読んでいる方も作っている方も限界が出てくる。

 なにもApple様々記事ばかりでなくてもよいのだから、「すんません。ほんとは最新マシンとか使ってません。実はMac OS Xとかいらないんです Q&A大特集」とか組めばそれなりに売れそうなきもする。

 2.編集部Mac買いしぶり論

 Mac系の雑誌でありながら、実は編集部はMacをぜんぜん買っていない。というかマシンはAppleからもらえる。最新マシンが出るたびに発表会なるものがあり、業界でそれなりに地位のあるメディアだとその場でマシンを渡してもらえるのだ。Apple側は、「まぁ載せてくれや」という感じなのである。

 また編集部では原則として自分のマシンは自分で買うことになっており、アルバイト採用の際も「所有しているMac」というものが重要な選考基準となる。PowerBook G3 とPowerBook G4を持っているやつがいたら、PowerBook G4の方が採用される。人体の頭脳よりパソコンのCPUが重視される即物的な採用システムである。また、デスクトップ型のMacの所有者には「やっぱりノートを持っていた方が色々と勉強になるんじゃないの?」みたいな感じで圧力がかかる。

 というわけで実際には会社としてMacを買うと言うことはめったにない。先に述べたようにDPTマシンに関しては古いやつでもぜんぜんやっていけるので買う必要もない。採用されるやつは最初からPowerBookを持っている‥‥。自分のところではMacを買わないけど人には勧めている雑誌を作るとはなんとも変な状況だ。

 3.Windows使用説

 編集部ではWindowsは禁句であるが、よくよく話してみるとWindowsをかなり使い込んでいるスタッフも多い。「Windowsはつかえねぇよ。XPとか安定はしてるけどインターフェイスがなっとらん。」とかなんだかんだいってWindowsマシンに妙に詳しい連中も多い。ライターは特に現実的なので、Mac用雑誌の記事を執筆するために一応Macを所有しているが、実はWindowsをメインで使っている、などという人もいる。

 まぁ結局のところQuarkもPhotoshopもIllustratorも全部Windows版が出てしまっているので、Macでないと仕事ができないという事はほとんどなくなってしまった。むしろ情報元となる企業がほぼWindowsを使用しているので、データのやり取り等でトラブルが多い。Macを使うことでもろにトラブル被っている編集部がそれでもMacを使えというのもやはり矛盾を感じるのだな。




■ 第12週  ■


 体がやばいことになってきたので、会社の薦めで傷病休暇を取ることになった。入社して3ヶ月目にしてもう体が駄目になってきた。今後はどうなるかわからないが、他の部署に移ることになると思う。
 
 上司と話合う機会があったのだが、上司の編集に関する見方は意外と現実的だった。編集とは結局、労働時間、拘束時間が長く、時間には割に合わない給料で、プライベートがない、という仕事なのだ。発想とか創造性とかそういうものが活躍する機会はあまりなく、ほぼ事務職に近い。記事や担当ページの執筆などというと格好はいいが、実際は文字の流し込みに近い。しかもルーズな周りの人間の行動にやたらと仕事が左右され、結局は時間を削られる。

 長い目でみてこれは続けられる商売ではない。部署は上に行くほどプライベートがない。役職について居る人間は結婚もあきらめている。年がいってしまった人はいまさら商売替えもできない。

 まぁ病人に対しては誰しもそうかもしれないが、休暇を取る前日の上司はやたらとやさしく接してきて不気味だった。いままでなんだったんだよって感じだ。まぁしかし現実的な示唆をしてくれた。生活のプライベートな部分が欲しければ商売替えをしろ、編集だけがすべてではない、幸か不幸かいろいろとやっている会社なので、英語とか得意なものを活かせる部署にいってはどうか、などなど。ただの編集バカだと思っていたが、結構編集のヤバイ部分をわかりつつ仕事をしているのだなぁと見直した。まぁよくよく考えてみると上司はプライベートに関しは完全に捨てているし、家族もいないし、可哀想な人ではあるな。編集長っつっても所詮は某Mac誌の姉妹誌だし、完全に自分の好きなようにはやらせてもらえないし、あげくに編集長を降ろされて飛ばされるというのも不幸な話だ。

 なんだかよくわからないが、この商売にはほとほと愛想が尽きた。もっと魅力的な上司ならもう少し続いていたかもしれないが。文章を書くとか、ページの構成を考えるなどと言うのはなかなかおもしろそうなことではある。しかしながら自分の言葉で文章を書くというよりは、あらかじめ決められた言葉と文字で文章を書かされる、と言う感じだ。そして求められる文章は最悪につまらないものだ。自分で読んでおもしろくないものを、人に読ませてどうするんだ、などと思ってしまう。ある程度文章を書くのが好きな人間なら、あるいは自分の文章にポリシー持っている人ならば、雑誌編集という職業には絶望してしまうかも。ここで求められるのは上の命令や雑誌のコードにフィットするあくまでもビジネスの文書だ。創造性とか独自性とかそういうものは求められない。
 
 うーむ。なんだか暗いな。いずれにしてもだらだらと1日14〜16時間もやりたくない仕事をやらされて、土日も休めるかどうかわからず、上司に恵まれない、となると体も変になってくるといことか。ある意味早い時点で部署替えができるチャンスが巡ってきたというのはラッキーだった思う。次の職場はたぶんネット系の部署になると思うけど、まぁとにかく今は体を大事にせねば。

 


■ 第13週  ■


 傷病休暇で2週間ほど会社を休む。なんだか身体が本格的におかしくなっていて、何もしていないくても全身がピリピリしている。家族はかなり心配している。ちょうどよいタイミングで知人が台湾に旅行に行くというのでおもいきって付いていった。いやぁ台湾いいね。とりあえず暑い。


■ 14、15週  ■


 どうやら1ヶ月後には編集部を脱出できそうだ。今のバカ上司はあと2日で上司でなくなる。このおっさんがいやでこの部署をやめたいのに、おっさんと同時期に編集部を出るというのも皮肉なもんだ。最悪の上司に最期までつきまとわれるのがうざい。しかもおっさんは先月飛ばされる予定だったのに未だに編集部でうろうろして説教してくる。ほんとになんなんだこの人は。

 今日バカ上司から「君はこの編集部希望で会社に入ってきたのに数ヶ月で他に異動するなんて最悪だね」みたいな説教をされた。いまさらそんな説教をしてどうしようというのだろうか? どうせ自分も飛ばされるんだから、せめて最期ぐらい良い印象を部下に与えておけば良いのにと思う。新人の愚痴はすさまじい浸透力を持って広がっていくということを分かっていない。まぁ結局部下の管理ができないから飛ばされるんだが。

 「君の理想とする社会人像はなにかね?」見たいな話をしてきたので、働きつつも勉強して、大学院などがんばって通ってる人、などというと「そういう甘い考えを他の上司の前でいったらぶん殴られるよ」などとのたまう。理由としては大学院の知識など会社ではなんの役にも立たないからだそうだ。大学院に行ったことのないおっさんがそこまで言い切れるところに感心してしまう。んじゃぁがんばって大学院に行ってる社会人はみんな甘ったれ野郎で上司からぶん殴られるんですか? などと聞くと「君はなんにも分かってない。」らしい。ほんとにおっさんの言うことは理解不能なのでこの指摘は正しいかも。おっさんは言葉に窮するといろいろと別の説教をし始めるので、結局こちらは面倒になってはいはいとうなずくしかなくなるのだ。こういうおっさんが雑誌を作っても売れるわけがない。
 
 また、このおっさんの傾向として自己弁護をしながらべらべらといいたいことを言うというものがある。「僕はそうは思ってないけど」とか「他の上司だったらもっとひどいことになっていたよ」とか。ほんとうはこいつがオレのことを気にくわないというのがみえみえなのに、「僕はそうはおもってないんだけどね」とかガキのようなことを言いやがる。他の部署に自分の悪評が広がることはひどく恐れているが、性格の嫌らしさうえに言いたいことは抑えられない。しかしいかにも自分はそうは思っていないようないい方をする。自分の責任を逃れようとしながら、いいたいことをねちねちとぶちまけてくる。上には徹底してへつらう。部署をとばされても上にはへらへらし、下にあたる。

 バカ上司がせっかく飛ばされるからもう少し待つべきだったのか。次の編集長がまともな人なのが妙にもったいない。いずれにいしてもこの部署にいては体が持たないので、異動は間違いではないと思う。編集という仕事には未練はない。つまらん。4ヶ月いて一度もおもしろい、という瞬間がない。病み上がりで残業2時間程度で家に帰れる、という最近の傾向がうれしいぐらいだ。ほんとになんなんだろうな。

 突き詰めて考えるとやはり適当な気持ちでここに来てしまった感がある。出版社の現状を分かってなかったところはある。究極的に自分は家庭、プライベート、家族、人生、休日‥‥全てを捨てて編集にかけるような上の人間を尊敬できない。正直そういうのはアホらしいと思う。まぁしかしそれはしょうがないではないか。好きでババを引いた訳ではない。

 オーストラリアのホストファーザーになんでオーストラリアの商店はとっとと5時で閉まって、土日開けないんだ?みたいなことを聞いたら"Working is for living, but living is not for wroking."と言っていたことを思い出す。あの親父はきちん5時、6時には家にいて、家事とか勉強とかスポーツなぞを楽しんでいた。よくわからんけどそういうのを見てしまうと、本当は楽しんでないくせにバカみたいに働いてるヤツがバカに見えるんだよな。


■ 16週  ■


 なんか毎週愚痴ばかり書いているな。根がネガティブなのかも。それにしてもこれからどうすっかだな。惰性で会社いてもしょうがないし。少なくとも今いるところはあっていなかったわけだ。新しい部署に移ってなにかつかむところがあるかもしれないし、やっぱやめるべ、ということになるかもしれない。

 うーむ。どうしていいかよくわからん。



■ 17、18週(たぶん)  ■


 バカ上司はなかなか飛ばされない。というか飛ばない。ほんとは8月から代わってるはずなのに、受け入れ先がないらしく、いつまでも自分の机にしがみついている‥。まだ上司づらしていばっている。ようやく先週になって荷物をまとめはじめたが、未だに異動する気配なし。大丈夫なのか? この会社の辞令はどうなってんだろう。まぁしかしもうすぐあのバカに倉庫に呼び出されて説教されなくなるということは嬉しいではないか。送別会とかまず有り得ないと思うが、万が一計画されても絶対に行かないもんね。

 なんだか知らないが、自分の異動の話も宙に浮いたままだ。どうも会社というのは面倒なことが多い。早いところ辞めようかと思うが、辞めてどうするかと聞かれると困ってしまうのだな。まぁしかしここにいてどうするの、と聞かれるともっと困るわけだ。別にいたくているわけでなく、惰性で今の会社にいるわけだ。



■ 19週  ■


アップルがまた夜中に新製品を出し、入稿したばかりのニュースページを差し替えさせられる。しかしこの記事で値段に「円」をつけるのを忘れてしまった。さらに間の悪いことに「内蔵ハードディスク」を「内臓ハードディスク」と表記するというオオボケをかましてしまった。

 バカ上司の目がらんらんと輝き、ここぞとばかりにいばりまくる。すげぇ勝ち誇って「みつけちゃったもんねぇ。」「円がないもんねー」「内臓内臓内臓〜!」という態度がムカツク。

 「ハードディスクは臓器かね、君?」「ここの値段はドルなのかユーロなのか円なのか読者はわからないじゃないの?」んなわけねぇだろ! こういうのは説教ではなく、「嫌み」だ。こっちとしても非があるのは充分に分かっているわけだから、人のミスにつけこんでくどくど言うのは勘弁して欲しい。

 ああムカツク! こちらのミスだけに反論の余地もない。ほんとどうしようもない。なんかムカついて反省する気になれない。


■ 20週  ■


 ネットで「会社辞めるべきテスト」みたいなのをやってみたら100%辞めるべき、とか出た。そんなもんなのか。とりあえず冬のボーナスをもらったら辞めるかな。

 未だ異動はできず。締め切りに追われる日々が続く(って大した仕事じゃないんだけど)。拘束時間だけはあほみたいに長い。

 自分人生なんだから好きなように生きないとだめだよな。



■ 21週  ■


 ようやく退職願いを出す決心をした。辞めようと思ってから2ヶ月以上かかってしまった。そんでもって辞めるまであと1ヶ月はかかりそうだ。人事とかに相談したけど、なんかどうしようもないな。ほんと辞めるしかない。

 んでもって今度辞めるとなると、諸問題をぜんぶオレのせいにしてきやがる。会社ってのはそんなもんなんだよな。

 とりあえずICU生のみなさん、毎○ミだけは絶対に就職しちゃだめよ。マジで。悪いことは言わないから。



■ 22週  ■


 いざ退職願いを出すとなるとささいなことが気になるもんで、どうぜだすならビシッと出したい。封筒などにもこだわりをみせ、渋い白で決めることにした。筆ペンで「退職願」(どどーん)という感じに仕上げる。いいね。なんか廃刊寸前の雑誌をつくるよりぜんぜん気合がはいる。業務の引継やなんかで1ヶ月はみないといけないというが、オレの場合1ヶ月先まで雑誌がつづいてるかどうか不明なので、引継とかもさびしい。

 とりえあず円満に辞めさせてほしいもんだよな。(かなり責任をなすりつけられそうな雰囲気。)


■ 25週  ■


 ついにあと一週間で脱出できるぞ。最近もうすぐ脱出、というのですげぇハッピーだ。なんか刑期を終えるみたいな感じかな。
 
 あれは一種の刑罰みたいなもんかもしれない。毎日徹夜して、会社に泊まって、身体壊して、くだらない上司の命令にしたがって、やりたくもない作業を延々とやる。挙げ句にそれができなきゃ社会人できねぇよなんて言われる。

 20時間働いて会社で4時間寝て、また働く、みたいな週が結構あった。んでもってもらえる深夜勤務手当が月5,000円とかふざけたことを言っている。残業料もちゃんと出ない。深夜タクシーで6,000円ぐらいかけて家に帰っても請求できない。請求すると説教され、深夜までいたのはお前のせいだとか言われ、取り消される。

 まぁこういう話を書いてもきりがないけど、なんかほんと疲れた。残り1週間は定時に帰ってやる。

 終わったらパーと旅行にいくぞ!



■ 26週  ■

終わった。最期の出勤日も終電だった。帰れただけましか。「もうちょっと残業していけば」とかバカなことを言われたのが、なんとか脱出した。本当に危ないところだった。

 「仕事が残ってるんだったら明日もこいよな」みたいなことを平気で言っていたが、それは法律上まずいだろうが。だいたい2ヶ月以上前から辞めるって言ってあるんだから最後まで終わらない仕事を与える方がおかしい。ほんと狂ってる。
 

 そんでもって、今後は収入は減るけど、ライター業は続けられそう。編集部はやばいところだったけど、いろいろなライターと知り合いになれたし、業界の繋がりはできた。そういう意味では無駄ではなかったのかな。


■ エピローグ  ■


作っていた雑誌は退社後2ヶ月で廃刊になった。ふと新人研修を思い出すと、自分は砂漠の中に生き残ることはできなかったが、砂漠を脱出することはできたのかな、などと思う。




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