ICU国際基督教大学、2018年度一般入試、社会人入試の出題ミスを公表

ICU(国際基督教大学)の公式Webサイトで、2月6日に、2018年度のICU入試で出題ミスがあったことが公表されていました。

総合教養(ATALS)と英語リスニングでそれぞれ1問ずつ、形2問で全員正解の措置がとられたようです。公開された2つの問題をみてみましょう。まずATALSの方から

1) 「総合教養」 (一般入学試験 A・B 方式、社会人特別入学試験)
該当箇所:設問 38 の正解が 1 つに定まらないことが判明しました。

光学天体望遠鏡を高い山の上に設置することの利点として適切でないものは次のどれか。
a. 夜空が暗いこと。 b. 大気が安定していること。 c. 湿度が低いこと。
d. 大気圧が低いこと。

総合教養の問38なのでPart 4自然科学の問題で、望遠鏡を高い山に置くメリットではないものを選ぶもの。これは既存の望遠鏡の設置場所から着想を得て作問されたのではないかと思われますな。すばる望遠鏡のWebサイトには以下のように書かれています。

(credit:https://www.subarutelescope.org/Gallery/)

Q 3: すばる望遠鏡をなぜハワイのマウナケア山頂に造ったのですか?https://www.subarutelescope.org/Information/j_faq.html
A 3 :天体観測を行う場所として必要な条件は、「天気がよいこと、大気が安定していて星像がゆらがない (またたかない) こと、湿度が低いこと、夜空が暗いこと」などが上げられます。マウナケア山頂は、これらの条件がすべてそろった理想的な天体観測の場所です。また日本からハワイへのアクセスが容易であることも、選ばれた理由の一つといえます。

天体観測を行う場所の必要な条件だけを考えると、dの「大気圧が低いこと」は、これらのメリットに該当しません。実際にすばる望遠鏡は大気圧の低いところにあるにもかかわらず、その点は天体観測のメリットとしては明記されていない。さらに、作業や物資の運搬が大変で、望遠鏡のメンテナンスなどが大変になるという点で、実務上の問題が出てきそうです。すばる望遠鏡のサイトにも、見学者等に対して、低い大気圧に関する注意書きがあります。

https://www.subarutelescope.org/Information/Tour/Summit/j_precaution.html
マウナケア山頂は標高 4200 m の高地であり、大気圧は平地の 60 % 程度しかありません。このため大気中の酸素も薄く、訪問者は高山病にかかる危険があります。

更に、「マウナケア山頂は、これらの条件がすべてそろった理想的な天体観測の場所」と書いてあることから、「a. 夜空が暗い、 b. 大気が安定、 c. 湿度が低い」は、一般的に天体観測を行う上での有利な条件であり、マウナケア山頂はこれらが揃っている貴重な場所ということですね。だからわざわざハワイに観測所を作ったと。逆に言えば、全ての高い山がこれらの条件を備えているとは限らない。例えば大気が不安定で、湿度が高いという高い山もたくさんありそうです。それらの高い山に望遠鏡を設置するのは、天体観測の条件を考えると必ずしも適切ではない。よって、この問題は答えが一つに絞れないということですね。

続いてもう1問の英語リスニングの問題。

2) 「英語」 (一般入学試験 A 方式)
該当箇所:設問 15(リスニング)の選択肢に正解がないことが判明しました。

If the conversation is taking place on Wednesday April 4th, when is the last day of the
orientation?
a. April 9th b. April 11th c. April 13th d. April 15th

問15なのでPart IIの長い会話文の最後の問題。

4月4日水曜に会話があったということなので、恐らく、終了の日の曜日、もしくは、オリエンテーションが何日間続くかという事に言及していた問題だと考えられ、その曜日や日付に該当する選択肢がなかったということだと思われます。ICUの英語リスニングはキャンパスライフでの実践的な英語がテーマになっているのですが、2018年の4月4日は水曜日なので、2018年のカレンダーを念頭に作問されていますね。

いずれにしても1問は知識問題、1問は放送に従って答える問題だったので、どちらもあまり長考するような問題ではなく、試験時間などにはあまり影響は無い問題だったと思います(2問目は試験当日に全試験室において口頭でも伝達したとの注記あり)

特に総合教養ATLASはそもそも公表していない試験科目なのですが、その問題をわざわざ公表したというのは、積極的に合否に関わる内容を公開するという姿勢が見えますね。京大の入試出題ミスなどが影響したのか、2月3日実施から3日後の2月6日に公表されたので、今回はとても迅速な対応でした。

毎年大学入試を受験していると、答えがでないような問題もたくさん出てきますが、それらの問題は気にしないことが大事です。ICUの問題は比較的手間暇かけて作られていますが、とくに学部の多い大学ほど大量の入試問題を毎年新たに作問しなくてはいけないので、粗製濫造とも言える問題が出てきます。

予備校や出版社の出している参考書は厳重にチェックをしたり、読者からのフィードバックを受けていたりするので、参考書の問題の方が入試問題よりも良問が多く、完成度が高いです。参考書のような良問ばかりが出題されることを入試で期待しない方がよいです。実際の試験では、答えが出ないような問題に時間を使わないことがとても重要ですね。