志望学科と募集人員
志望学科と募集人員
注:第1志望、第2志望の割合は入試前日に実施したアンケートによる。サンプル数は185。数値は全体のうちどのくらいの割合の人がその学科を第1または第2志望にしていたかということを表す。
IS | SS | Hm | Lg | NS | Ed | |
募集人員 | 24% | 24% | 15% | 15% | 14% | 8% |
第1志望 | 35% | 21% | 13% | 12% | 10% | 9% |
第2志望 | 22% | 29% | 17% | 12% | 5% | 15% |
バランス(*1) | -9% | 3% | 2% | 3% | 4% | -1% |
(*1)バランスは定員と第1志望とのギャップ。
(*2)IS=国際関係 SS=社会科学 Hm=人文科学 Lg=語学 NS=理学 Ed=教育
上記の表及びグラフは各学科の定員とそれに対する受験生の志望動向を表している。最も第人気があった学科はやはり国際関係学科で、実に35%もの受験生が国際関係学科を第1志望としていた。別の言い方をすれば1/3以上の受験生が国際関係学科を第1志望としていたということになるから、その人気は相当なものである。2番人気は社会科学科で21%だった。その他の学科はHm(人文科学科)が13%、Lg(語学科)が12%、NS(理学科)10%、Ed(教育学科)が9%であった。第2志望においてはSSがISを抜き一番人気となっている。これはISを第1志望する人の多くがSSを第2志望としていることが原因で、IS第1志望者の実に50%近くがSSを第2志望としていた。
さて、ここで注目したいのは定員と第1志望とのバランスである。国際関係学科は定員に対して-9%となっている。つまりこれはI国際関係学科第1志望者で合格件に達した人の約25.7%は国際関係学科に入学できないという計算になる。その他Edにおいて-1%となっており、教育学科でも第1志望で合格できない人が出る可能性がある。ではここでもう一度ICU入試のシステムを確認してみたい。ICUでは教養学部単位で生徒を募集しているので、基本的には合格圏に達した受験生は全員どこかの学科に合格できるはずである。つまり900人の合格者がいるとすると、上位900人は全員合格できる、というシステムに一応はなっていると考えられる。前出の表で説明したように第1志望学科合格率は約9割で、ほとんどの学生が第1志望に合格する。上記のアンケートでも国際関係学科の約25.7%(全体の9%)、教育学科の約11%(全体の1%)はそれぞれの第1志望学科に入れないが、その他の90%の学生は志望学科に合格するということが予想される。つまり国際関係学科、教育学科以外の学生はほぼ第1志望で合格する。第2志望学科をあれこれ考えても有利になったり不利になったりすることはない。またたとえ20%ほどが第1志望で入れないと予想される国際関係学科の学生であっても合格圏に達していればどこかの学科には合格できるのだから不利になるということはない。
はっきり言ってしまえば第2志望学科で合格するもののほとんどは国際関係学科または教育学科を第1志望としていた受験生であると考えられる。であるからその他の学科第1志望とする学生がせこせこと「どの学科が簡単か? 入りやすいか?」ということを考えても意味は無い。また可能性は低いが国際関係学科を第1志望としていた学生が第2志望としていた学科の定員からもあぶれてしまうケースも考えられる。しかし過去に国際関係学科を第1志望、社会科学科を第2志望としていた受験生が人文科学科に入学したという例もあるので、いずれにしても合格圏に達した学生は順当に合格できるという可能性が高い。万が一入試成績の下のものが上位の者を抜かして合格するグレーゾーンが存在するといしても、第1志望学科合格率が90%であることを考えると10%以下でしかない。
しかしながらもし入学しやすい学科があるとすればそれは理学科である。理学科の第2志望に注目していただければわかるが、理学科を第2志望としている受験生は極端に少ない。特に第2志望合格になりやすい国際関係学科、教育学科の志望者で理学科を第2志望とするものはほとんどいなかった。つまり理学科の定員はほとんど第1志望で埋めなければならない、ということになる。しかしながら理学科は全体の定員の14%を占めているにも関わらず理学科を第1志望としている受験生は10%しかいなかった。第1志望だけでは理学科の定員の約28%が足りないということになる。そこで本来ならば第2志望者をまわして来るはずだが、理学科第2志望者はほとんどいない…。
ということはやはり理学科を第1志望としているものを他の学科よりも有利に合格させてそのギャップを埋める必要が出てくるのではないか? ここで着目したいのは前出の「自然科学考査と社会科学考査の格差」である。つまり理学科第1志望者は全員自然科学考査で受験しなければならない。そして社会科学考査受験者が25%しか合格していないのに対して自然科学考査受験者は36%も合格している。差し引き11%も自然科学考査は有利なわけだ。さらに自然科学考査受験者の第1志望学科合格率は96%と非常に高く、理学科志望者のほとんどが第1志望で入学しているということが予想される。つまりこのギャップは志願者の少ない理学科の定員を満たすために社会科学考査よりも自然科学考査が有利になっている、ということから生じているのではないだろうか?
つまり以下のような仮説が立てられる。理学科は他の学科よりも志願者が少ない。特に第2志望はあまりいない。だから他の学科よりも合格は簡単になる。しかしながらそれでは学科間で格差ができてしまう。そこで学科間ではなく、科目間に格差を設ける。(あるいは結果として格差が生まれる。)具体的には自然科学考査の方が高い偏差値がでるようなシステムにする。実際に問題をみると自然科学考査の方が問題数が少なく、質的にも簡単である。しかも数学、物理、化学、生物から得意な科目を選択できる。公平にするためには文系の試験である社会科学考査も日本史、世界史、地理、政経などから選択するようにすべきである。しかしそのようなことはしない。明らかに理系の方が優遇されている。
しかしこのシステムは明らかに理系に有利であるが、理学科の受験生だけが有利というわけではない。なぜなら理学科以外の学科を第1志望とする学生も自然科学考査を選択できるからだ。また理学科の志願者は必ず自然科学を選択しなければならず、そのような意味においては選択の幅が少なくてむしろ不利である。また理学科の受験者数も受験科目の制限によって増えにくい。そしてICUの使命であるリベラルアーツ教育においては理系、文系の学生両方の学生を確保しなければならない。であるから必ずしも「理学科は簡単で不公平だ」ということは言えないのかもしれない。