2025年度ICU一般選抜、入試結果の分析(3教科型)

2月 11, 2025

併願制度導入で志願者と合格者が増加

2025年度の国際基督教大学(ICU)の一般選抜では、入試制度が大きく変更され、「人文・社会科学選択」と「自然科学選択」の併願が可能となりました。この変更により、併願によって受験生にとっての選択肢が広がり受験者数が増加しました。一方、合格者数も増加しています。また、それぞれの受験者数と合格者数が公開されることで、科目ごとの違いが可視化されました。本記事では、2025年度の入試結果を分析し、新制度の影響を考察します。

ICU理学館の教室の様子。2025年度は本館が改装中のため、理学館も活用して一般選抜が実施された

2024年度と2025年度の志願者数と合格者数の比較

年度選択科目志願者数(編入)合格者数(編入)倍率
2025年度人文・社会科学選択885人(52人)256人(6人)約3.46倍
自然科学選択198人(7人)73人(0人)約2.71倍
合計1,083人(59人)329人(6人)約3.29倍
2024年度A方式合計926人(55人)273人(10人)約3.39倍

志願者数、合格者数が増加

2025年度では志願者数が1,083人と、昨年度の926人から約17%増加しました。併願制度導入による重複受験者もいるため、重複しない受験者数は不明ですが、累計受験者数としては増加しています。

合格者数は329人と、昨年度の273人から約20%増加しました。これは併願制度導入による重複合格者が存在することも影響していそうです。

総志願者数と総合格者数で計算した倍率は、2024年度が約3.39倍、2025年度が約3.29倍と大きな変化はありません。

併願制度の導入によって累計の受験者数が増えると同時に、重複合格を見越して合格者も多めに出たものと推測され、受験者も合格者も増えたというのが併願制度の導入の効果と言えそうです。

人文・社会科学と自然科学の倍率の比較

昨年度まで「人文・社会科学」と「自然科学」のいずれか1つを選ぶ方式であったため、選択科目別の倍率は公開されていませんでした。しかし、今年度から選択科目をそれぞれ受験して併願することが可能になったため、選択科目別の倍率が明らかになりました。その結果、人文・社会科学選択の倍率が約3.46倍、自然科学選択の倍率が約2.71倍となり、人文・社会科学選択の方が倍率が高いことが明らかになりました。

ちなみに、この傾向は以前から受験番号や教室割りなどから推測されていましたが、今回初めて公式に確認される形となりました。具体的には、いまから10年前の2015年までは学内で合格者番号の一覧が掲示されており、科目別の合格者数と倍率を推測することができました。例えば2015年度の推計データでは、人文・社会科学選択の倍率は約3.29倍、自然科学選択は約2.67倍でした。これらと比較すると、2025年度の倍率は大きく変化していないことが分かります。

つまり、2025年度の入試から急激に人文・社会科学の倍率が上昇したわけではなく、以前から存在していた選択科目の倍率のギャップが、今回初めて公式データとして可視化されたと言えます。

年度選択科目倍率
2025年度人文・社会科学約3.46倍
自然科学約2.71倍
2015年度(推計)人文・社会科学約3.29倍
自然科学約2.67倍
2015年度入試まではICU学内で合格者の受験番号の一覧が掲示されていた。写真は2015年度指定校推薦入試の合格発表

選択科目でこのような差が出る背景には、自然科学選択者には国立併願者が多く受験者の質が高いこと、相応の辞退者が出ること、ICUが理系専攻を持つ大学として自然科学分野の研究を担う学生を確保したいという学内事情などが影響している可能性があります。

ICUは文系のイメージを持つ受験生も少なくないことから、大学側は理系志望者へのアピールを強化しています。例えば、近年では理系特化型ミニオープンキャンパスを実施するなど、理系専攻も可能であることを広く周知する努力が行われています。

ICUが「College」ではなく「University」を名乗る理由には、文系・理系を問わず幅広い学問分野を提供している点があります。米国のリベラルアーツカレッジは主に文系教育に特化している場合が多いですが、ICUでは理系専攻も充実しており、この点が大きな特徴です。ICUでは文理横断型の専攻も可能ですし、このような学問領域の広さこそ、「University」としてのICU独自の魅力といえるでしょう。

なお、文系専攻希望者であっても理系科目で受験することが可能ですし、その逆も可能です。入試の選択科目によって入学後の専攻(メジャー)が制約されることはありません。

編入は個人差が大きい

編入合格者は2024年度の10名から2025年度には6名になりました。編入志望者は各受験生の個人差が大きく、結果として年度ごとの合格者数にばらつきがあります。この点については特定の傾向を見出すことは難しいものの、新制度導入後も編入制度に変更はありませんでした。

まとめ

今回の新制度導入により、複数科目の受験が可能となり、受験者数が増えると同時に、合格者数も増加しました。また、選択科目ごとの倍率が可視化されました。今月中旬に二次試験が実施される面接型入試も受験者数が増加しており、併願による複数の入試方式の活用が来年度以降の入試でもポイントになりそうです。