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『リベラルアーツという波動: 答えのない世界に立ち向かう 国際基督教大学の挑戦』

今回は『リベラルアーツという波動: 答えのない世界に立ち向かう 国際基督教大学の挑戦』という本について紹介します。この本は、ICUの教授たち(伊東先生、森島先生)が執筆した、リベラルアーツ教育の魅力と可能性を探る一冊です。ICU入試受験生が読むべきかどうかという視点からレビューしたいと思います。

伊東辰彦・森島泰則 編著、『リベラルアーツという波動: 答えのない世界に立ち向かう 国際基督教大学の挑戦』、学研プラス、2019

1. リベラルアーツ主義の提唱

本書は、「リベラルアーツ主義」の提唱から始まります。著者たちは現代社会における大学教育の使命について深く考察し、幅広い知識と柔軟な思考力を養うリベラルアーツ教育の重要性を説いています。

2. 高校生からの問いかけ

特に興味深いのは、「大学教授、高校生のチャレンジを受ける」という章です。ここでは、高校生からの深遠な問いに大学教授が答えています。「過去のことはなぜ美化されてしまうのか?」「人間には生きる目的があるのか?」といった哲学的な問いかけに対する教授の回答は、リベラルアーツ的思考のプロセスを体現しており、皆さんの知的好奇心を刺激するでしょう。

3. 卒業生の声

リベラルアーツ教育の効果を知るには、卒業生たちの声を聞くのが一番です。本書では、教員として活躍する卒業生や、様々なキャリアを歩む卒業生たちの座談会が収録されています。

4 ICU入試「ATLAS」

ICUが導入した「ATLAS」(総合教養)についても解説されています。日本語のリスニング試験を行う理由や、その背景にある教育理念が説明されており、大学入試の新しい形を知ることができます。

5. グローバルな視点でのリベラルアーツ

最後の章では、世界のリベラルアーツ教育の動向が紹介されています。日本だけでなく、グローバルな視点で教育を考えることの重要性が強調されています。

ICU創立のいきさつ:印象的なエピソード

特に印象的なのは、ICU創立のいきさつに関する記述です。戦後間もない1949年、日本の民主化と平和構築に貢献する人材を育成するという理念のもと、ICUが設立されました。この創立の精神が、現在のICUのリベラルアーツ教育にも脈々と受け継がれていることがわかり、大学の理念と実践の一貫性を感じることができます。

リベラルアーツとは?

リベラルアーツの定義は一概に言い表すのが難しいのですが、ICUで実践されている教育は以下のように捉えることができるでしょう。それは、多岐にわたる学問分野を横断的に学ぶことで、幅広い知識を獲得し、同時に物事を多角的に分析する批判的思考力や、新たな発想を生み出す創造性を育むことです。つまり、特定の専門分野に特化するのではなく、人文科学、社会科学、自然科学などの様々な領域を学ぶことで、柔軟な思考力と豊かな教養を身につけ、複雑な現代社会に対応できる総合的な能力を養成することを目指しているのです。この内容はICU入試にも反映されています。

本書を読むと、ICUのリベラルアーツは、単なる知識の習得を超えて、未知の課題に立ち向かい、未来を切り拓くための学びを目指しているように思われました。

おわりに

『リベラルアーツという波動』は、大学での学びや入試について考えるきっかけを与えてくれる本です。ICUについて詳細に書かれた貴重な資料であり、ICUの教授陣が執筆しているため、通常の大学案内では触れられないような深い洞察や内部の視点が含まれています。カリキュラムの背景にある教育哲学、教室内での具体的なディスカッションの様子、さらには卒業生たちの座談会などの内容も盛り込まれています。

これからICUを目指す高校生にとっては、一読の価値がある本です。ICUに興味がある、あるいはリベラルアーツ教育について詳しく知りたいと考えている学生にとって、参考になる一冊だと思います。ただし、入試に際して読まなかったからといって不利になるようなものではありません。

一般選抜,リベラルアーツ学習適性

学内新聞The Weekly GIANTS2012年度入試特別号掲載させていただいた、リベラルアーツ学習適性予想問題8の追加説明です。紙面の都合上詳細解説を掲載できなかったのでこちらに掲載させていただきます。

 

一般選抜,リベラルアーツ学習適性

ICU国際基督教大学学内新聞、The Weekly GIANTS 入試特別号にリベラルアーツ学習適性予想問題を掲載させていただきましたが、問8の解説スペースが足りなかったため、こちらに掲載させていただきます。よろしくご参照くださいませ。

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入試説明会,リベラルアーツ学習適性

<ICU入試説明6>

リベラルアーツ学習適性

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入試説明では「数量的領域、言語的領域、分析的領域から出題 迅速かつ的確な判断力や論理的な思考力を試す。」
と説明されていました。また80問は難易度にかかわらずそれぞれ1点との説明も。

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?各分野の例題が示されました。

この問題は百人一首で、a.b.c.dはそれぞれ以下の句がアナグラム化されたものですね

a.春過ぎて 夏来にけらし 白妙の 衣ほすてふ 天の香具山
b.有明の つれなく見えし 別れより 暁ばかり 憂きものはなし.
c.あしびきの 山鳥の尾の しだり尾の ながながし夜を ひとりかも寝む
d.天津風(あまつかぜ) 雲の通ひ路(かよひじ) 吹き閉ぢよ をとめの姿 しばしとどめむ

a.c.dはいずれも2句目の一部が欠けていますが、bのみ2句目および3句目の一部も欠けています。
百人一首を知らないと答えられない上に、法則性もすぐに思いつくものではないので、難しい問題と言えます。
「こういう問題がある」ということを知らないと、初見で短時間で解くのは厳しいでしょう。

もう1問みてみましょう。
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これは英単語+四文熟語の知識問題。
“endurance"はかなり難しい単語ですが、これは「忍耐、辛抱」などという意味になります。
耐えるという意味の"endure"の方がまだおなじみなので、こちらから類推できたかもしれません。
選択肢中で対応する四字熟語は「臥薪嘗胆」ですね。

リベラルアーツ学習適性の知識問題にはこの問題のように複数の要素が組み合わさったものが多く見られます。

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こちらはおなじみの数列の問題。

比を考え行くとそれぞれ-2×-2×-2×-2の比がかけられていることが分かります。
つまり1項×(-2), 2項×4, 3項×(-8)…と続いているので、最後は12×8=96です。

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?これはトポロジーという分野に関連する問題です。トポロジー元々数学の用語ですすが、ここでは図形の位相・空間的要素の位置的、接続的関係が問われています。
鉄道路線図を思い浮かべるとわかりやすいですね。
曲線を直線でイメージし、位置関係、接続関係(特に2本ある斜線)に注目して問題を見ると、選択肢bと問題の図とは同じものを示していることが分かります。

なお説明会ではこの他にもいくつかの例題が示されました。
これらの問題はいずれもBUCHO.NETオンラインレクチャー内で解説されております。

リベラルアーツ学習適性の対策をする際は、まずその出題範囲が非常に広いということを認識しておきましょう。
上記の数題だけをみても、完全に対策するには百人一首の暗記、主要四字熟語の暗記、語彙レベルの高い英単語の暗記、数列の基礎的理解、空間把握と、
広い範囲の学習が必要になります。80問を個別に分析していくと、その出題範囲は非常に広く、完全な対策は不可能です。
よってまず完全な対策を目指す科目ではないという理解が必要です。

また上記数問を見ても、それぞれにパターンがあり、これらのパターンを習得することも重要です。
さらに中学、高校の広い範囲から出題されますので、普段の授業を大事にするということも非常に大切です。

長年ICUの合格者を見ていて思うのは、指定校やAO入試、一般入試、さらにはセンター入試と、それぞれに違う制度にもかかわらず、入学するICU生には共通する
特徴のようなものを感じます。その特徴は、多くの学生が「幅広い教科への理解がある」というものです。
学際的なリベラルアーツ教育を実施するICUではある意味当然のことかも知れません。
指定校やAO入試で高い評定平均を求められ、結果全教科の成績がよい学生が合格します。またセンターでも国立型の試験が課されることにより、幅広い分野で高得点を出すことが求められます。
一般入試でもこの広い分野での理解が求められており、特にリベラルアーツ学習適性にはこの特徴が端的に表れているのではないかと思います。

受験対策的には、このリベラルアーツ学習適性対策は出題範囲が広大で、0からの対策で高得点を取るには時間がかかります。
よってあまりこのリベラルアーツ学習を「受験科目」として対策に時間をかけず、むしろ普段の授業を大切にし、過去問のパターンから短時間で効率的に平均点に達し、他の教科の学習時間を確保することが、攻略の秘訣だと思います。