ICU入試英語リーディングの語彙レベルの研究2

今回はICU入試対策として、前回の語彙レベルの分析を元に、具体的にICU(国際基督教大学)の入試英語のリーディングを受験するに際して、どのような語彙学習をしてくべきかを考えてみたい。

まず前回の解析結果から、3つの結論を述べたい。

1.3000語レベルまでは学習効率が高いので、単語帳などでの語彙学習は有効。基礎的な単語帳1冊はぜひやっておくべき。

2.6000語レベルを習得できればICU入試対策として、相当に得点できるレベルになる。ただし3000語-6000語レベルは3000語レベルまでと比較すると、暗記学習の効率は大きく下がるので、単語帳などでの学習にこだわる必要はない。英文を学びながら語彙を習得するのが理想。

3.7000語レベル以降は暗記に対する得点のリターンが大きく低減するのでするので、単語帳などの機械的暗記は推奨されない。ただし6000語レベル以降を全く学ばなくてはよいという訳ではもちろんない。学術的論文からの出題が多いというICU入試特有の出題傾向もあるので、語彙のレベルは後述の方法で見極めながら、英文を学びながら実践的な語彙を習得する。

以上の結論から、単語帳および過去問での語彙の具体的習得法を考えたい。

<その1 単語帳の活用法>

[単語帳の使い方]

1冊目 1冊目は仕上げた方がよい(3000語/センターレベル)

2冊目 2冊目は必須ではないが、もしやるのであれば、過去問の英文を読みながら平行して覚える(6000語レベル 私大向け語彙・単語帳)。1冊目からは効率が下がる事を認識する。

3冊目 効率が悪いので無理に手を出さない(超上級の単語帳)。語彙ばかりではなくリスニング、読解の技術や背景知識など、単語帳以外の学びを優先してやった方がよい。

 

<その2 入試問題中の語彙の判断の仕方>

入試問題中の個々の語彙を覚えるか覚えないか、この判断が難しいのだが、昨今はネットで語彙レベルが判定できるので活用する。

1.英辞郎

https://eow.alc.co.jp/

ずばり、今回の分析に用いた「標準語彙水準SVL12000」(SVL=Standard Vocabulary List)そのものの判定ができる。英辞郎のレベル1=1000語レベル/レベル12=12000語レベルである。

ICUの入試問題に登場したものに関しては、レベル6以内のものは積極的に覚える。そこから先は判断が難しい。経験上レベル9くらまでは重要だと思えるものはチェックしておく。レベル10-12は難しい語彙なんだと思っておけばよい。レベル判定がないものは捨てて良い。

なお、SVL12000の分類の仕方そのものにも突っ込みどころがあるので、あまり厳密に考えなくてもよい。ただしレベルの低いものは確実に覚える。なお、SVL12000の全リストは『究極の英単語 SVL(アルク)』シリーズに掲載されている(計4冊)。

2.ロングマン英和辞典

https://www.ldoceonline.com/jp/dictionary/english-japanese/

英英辞典でおなじみのロングマンもネットで使えるよい時代になった。
実は英和辞典もなかなか便利で、大学英語教育学会(JACET)の分類によるJACET8000(J1-J8)の判定を見ることができる。6000語(J6)が当面の目標ではあるものの、JACET8000は入試に特化したリストであり、可能であればJ8まで覚える価値は確かにある。逆に、レベル判定がないものは無理に覚えなくて良いという判断ができる。

なお、ロングマン英和辞典で見られるのJACET8000は2003年の分類で、現在は新JACET8000が2016年に発表されている。全リストが欲しい場合は2200円で販売中(『大学英語教育学会基本語リスト 新JACET8000(桐原書店) 』。

3.ジーニアス英和辞典

受験生なら電子辞書を持っているはずなので、ジーニアス英和辞典の判定を活用する。

ジーニアスでは星3、星2、星1、無印の判定があるので、星2までは確実に覚える。星1の語は4300語-9600語レベルにもまたがるので判断が難しい。星1は他の分類も活用する。多くの場合覚えて損はない。無印の語は捨てて良い。

<具体例>

流れとしては、ジーニアスで意味を調べた後、英辞郎もしくはロングマンでも調べてみる。以下に実際にICU入試に出題されている具体的な語彙を例にあげて使い方を解説する。

例1″reverberate

ジーニアス-無印→覚えなくて良い

英辞郎→レベル11(レベル10-12はかなりハイレベル)

Longman=無印→覚えなくて良い

各種判定から覚える語ではなく、音楽をやっている人ならreverb(リバーブ)から連想できるので、大学受験のレベルでは覚えなくて良い。このレベルまで手を出すのはやめた方がよいという例。

 

例2″indifferent"

ジーニアス-星1、他の判定を併用

英辞郎-レベル6 →覚えた方がよい

ロングマン-レベル7→上記2つも踏まえて覚えた方がよい

“indifferent"はハイレベル語ではなく十分に覚えたよい範囲であることが分かる。また"in"と"different"からは連想できる語ではないので、意味を取り違えやすいし、狙われやすそう。覚えておいた方がベター

 

例3″offspring"

ジーニアス-星1→他の判定を併用

英辞郎-レベル6→覚えた方がよい

Longman-レベル6→覚えた方がよい

各種判定で覚える語。環境問題や歴史などといった分野の論文でもよく出る単語である。さらにoffとspringからも連想しにくい語であるから、これは覚えるべき単語と言える。

 

<まとめ>

各種単語レベルの分類はそれぞれが研究をして頻度をベースに作成しているので、それぞれ収録されている語彙が異なる。複数の指標を使うことで、両方が低レベル語であれば確実に重要語であるとは言える。しかしながら複数の指標を使うと、それぞれに覚えておけという語彙がどんどん増えてしまう点には注意したい。そのような意味でやはり基礎の語彙は単語帳でやって、後は英文を多数読みながらやれる範囲で覚えるということになりそうだ。

なおオンレクの解説の語彙リストでは「大学入試の範囲を超える語」として、一部の語彙には"*"マークを付けているので、それらは大学受験の範囲からは除外してよい。どのレベルの語彙までやればよいということはとても難しいのだが、これは覚えなくてよいという語彙もあり、そちらは大いに参考にはなるはず。