2016年度 ICU一般入試対策(国際基督教大学学生新聞掲載記事)

今年度もBUCHO.NETは、ICU(国際基督教大学)学生新聞 The Weekly GIANTSからの要請を受け、ICU祭で発行されたICU学生新聞に、来場するICU受験生を対象とした、入試関連記事を執筆させていただきました。国際基督教大学学生新聞に掲載されたBUCHO.NETの2016年度向けICU一般入試対策の記事を、以下にご紹介いたします。

(ICU学生新聞 WG 2015年10月24日、25日発行 ICU祭速報号2,3面 )

2016年度 ICU一般入試対策

筆者はICU OBで、1999年よりICUの入試情報サイト(BUCHO.NET)を運営しており、ICU対策講座も実施しているが、その経験を踏まえて、昨年度ICU一般入試の分析と、来年度以降の対策方法を述べていきたい。

・昨年度入試の結果分析 受験者数が増加-

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2015年度のICUの一般入試志願者数(A方式)は、1,894人と、昨年度の1,576人を大きく上回った。以下は過去5年間(2011-2015年度)のICU一般入試志願者数を表したグラフである。

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2014年度と比較すると、2015年度は、約20%も受験生が増加した。受験生増加の要因としては、2015年度から受験生度が変更され、入試科目が4科目から3科目へと変更され、それまで全ての受験者に課されていた文系科目の試験(人文科学)が必須ではなくなったことで、理系の受験生が増えたところが大きい。実際にBUCHO.NET調査では、「人文・社会科学」の受験者が約19%増えたのに対し、「自然科学」の受験者は約27%増加している。また、2015年度のAO入試で秋篠宮家次女・佳子さまが合格され、ICUに関する報道が増えたことも少なからず影響しているものと考えられる。なお2016年度のAO入試志願者は昨年度から約21%増加しており、2016年度の一般入試の受験者も、昨年度から更に増加する可能性がある。

・対策1 英語、人文・社会科学(または自然科学)の2教科で高得点を狙う

2015年度から実施されている総合教養(ATLAS)は、旧リベラルアーツ学習適性がそうであったように、問題内容が完全には公表されていない。よって、まずは確実に出題される既存科目(英語、人文・社会科学(または自然科学))の対策を重点的に行うべきである。これら既存教科に関しては、細かな変更はあるものの、試験形式等はICUの伝統的な試験形式が踏襲されている。よって総合教養以外の科目は、ICUの過去問しっかり研究することで十分に対策が可能である。対策可能な2教科でしっかりと対策を行うことが重要である。

2016年度(一般入試A方式)

1.総合教養(ATLAS) (80分80点)

2..「人文・社会科学」または「自然科学」(80分80点)

3.英語(リスニングを含む)(約90分90点)

・対策2 総合教養(ATLAS)対策

総合教養はリベラルアーツ学習適性(一般能力考査)に代わって2015年度から導入された試験である。その形式は冒頭に15?20分ほどのミニ講義を聴き、それを元に40?45問程度の問題に答えるというものである。試験時間は80分で、試験冊子は講義の放送終了まで見ることができない。問題は4部構成で、Part Iは放送に直結した問題、Part IIは人文科学、Part IIIは社会科学、Part IVは自然科学に関連した問題がそれぞれ10問程度出題され、Part II, II, IVの問題の前には、放送と関連した各分野の短い論文が掲載される。旧リベラルアーツ学習適性と同様に、非常に出題範囲が広い。よって満点を狙うような試験ではない。実際にICUの公式Webサイトでは、一般入試B方式、社会人入試での総合教養の合格最低点が公開されており、いずれも80点満点中42点であり100点満点に換算すると52.5点であった。また、読解・聴解の要素が強い。文系の受験生の場合は、まずは人文・社会科学の過去問をよく研究して、それらの出題をしっかりと押さえておきたい。その上で、数学や理科を、高校の授業で習った範囲だけでも復習しておくとよい。一方、理系の学生は、人文科学の試験が昨年度から必須でなくなったことを含め、読解の要素がこの試験に盛り込まれているので、素早く論文に書いてある内容等を把握するために、人文科学の過去問を見ておいた方がよい。いずれにせよ、およそ全ての教科が出題範囲となり得る試験であるので、全てに対応するというより、併願校や選択科目等によってそれぞれ違ったアプローチが可能な試験と言える。まずは自分の選択している科目に関してはきちんと答えるという姿勢で試験に臨みたい。また、他校にはない特殊な試験であるので、ICUが一部公開している問題は必ず確認し、少なくとも試験の形式に関しては戸惑うことのないようにしておきたいところである。

・対策3 英語 リスニング対策が重要、リーディングは空所補充対策を

ICUの英語の特色として、英語の問題の約半分がリスニングであるということが挙げられる。これは難関私大でも中でも珍しく、リスニングを全面的に実施しているのは、早大の国際教養学部などごく一部の学部に限定される。よって、多くの受験生はリスニングの対策が必ずしも万全ではない。ICUを志望する受験生は、英語リスニングの対策をしっかりやっておくことが、大きなアドバンテージとなり得る。伝統的にICUのリスニングは、TOEFLの形式に類似しており、TOEFL教材(特にPBT/ITP形式)を使っての学習は有効である。また、ICUの過去問も出題形式や出題内容(大学生活をベースとした日常会話や大学での講義など)は概ね一定しているので、ICUの過去のリスニングの問題を用いての学習も非常に有効である。

英語リーディングに関しては、典型的な読解・内容一致問題(Part I)が中心であるので、英語の受験勉強をしっかりとしている人にとっては、さほど心配はない。ただしPart IIには300-400wordsの英文の中に20もの空所があるという、やや特殊な空所補充問題があるので、Part IIに関しては演習を重ねておくとよい。Part IIの空所補充問題には文法、語法、語彙のみならず、ライティングや文脈理解の要素も入っているので、英語の総合力が問われている。

全体として、ICU入試では総合的な英語力が問われており、特に大学での学ぶ上での英語の運用力、つまりアカデミックな英語力を測る試験であると言える。また、英語の実力を測る上で問題がよく練られており、概ね受験生の英語力に比例した点数が出る。よって、英語は十分に時間をかけて勉強し、試験に臨みたい。また、ICUでは、入学後もELAや英語で開講される授業等で、常に英語力が問われている。

・対策4 人文・社会科学 過去問演習が有効

人文・社会科学は大学入試としては非常に長い論文を読んだ上で、約40問の問題に答える形式で出題されている。2015年度の問題文の長さは、約12,000文字、B5用紙で10枚程度、問題数は41問であった。試験時間は80分で、回答に要する時間を考えると、20分?30分程度で約10,000文字以上の学術的文章を読み切る能力が必要となる。高1や高2の段階では、まずは読書の習慣を付け、新聞や新書等を継続的に読むなど、日本語の論文を読む訓練を行うとよい。その際、読んだ文章の要約をノートなどにまとめてみると、短時間での内容を把握や、文章読解の訓練となる。すでに高3で試験が控えている場合、あるいは高2などでICU志望が決まっている場合などは、ICUの人文・社会科学の過去問の演習を始めた方がよい。

人文・社会科学の特徴は、ICUの教授らによって、本文が試験のために書き下ろされたものであるということである。その他の大学の入試の現代文や小論文等の資料は、ほとんどの場合、既存刊行本や新聞記事等の文章を引用したものであるが、ICUでは、入試のためだけに、教授らが試験用の文章を毎年作成している。よって、ICUの人文・社会科学はICUの先生方から、未来のICU生へのメッセージという側面も持っており、内容の充実した論文が多い。また、毎年様々な教授らが論文の執筆を担当しているので、人文・社会科学の過去の論文をたくさん読んでいると、多様な学問分野を試験対策としてカバーできると同時に、固有の出題形式にも慣れることができる(経験上10年分以上の過去問を解くと出題が一巡し、得点力が一気に上がるようだ)。

・対策5 自然科学 記述問題が登場、数学は難化傾向

リベラルアーツカレッジ、あるいは教養学部系統の大学の中で、理系の学問もできるというのは、ICUの大きな特徴である。英語のできる理系の大学生は、就職や院進学など多方面で需要がある。一方、文系のイメージの強いICUで、理系の優秀な学生をいかに確保するかというのは長年の課題であり、入試では理系の学生は若干有利と思われる傾向がある。BUCHO.NETの調査では、2015年度の社会科学選択者の倍率が約3.29倍であったのに対し、自然科学選択者は2.67倍であった(2014年度はそれぞれ2.9倍、2.4倍)。自然科学の試験は、数学、物理、生物、化学の4教科から2教科を選択する形式である。また、4教科は同一の冊子に印刷されており、当日問題を見てから、回答する2教科をその場で選択することが可能である。自然科学の問題は、標準的な問題が多く、一般的な受験勉強をしていれば対応できる問題が多い。よっていかにミスをしないかというハイスコアゲームの要素がある。なお近年では数学において他の教科より難度の高い問題が出題される傾向にある。また、昨年度から各教科2-5問程度の筆記問題が出題されるようになった。特に筆記の計算問題では、マーク方式とは違って概算が使えず、正確な計算結果が求められるため、よりスピーディーに解答する必要がある。

・その他

筆者の主催するWebサイト(BUCHO.NET)では学内取材や過去の傾向に基づいた、放送付きの総合教養対策問題を多数用意している。また、その他教科も1988年の公開以降のほぼ全てのICUの過去問の閲覧・演習が可能である。興味のある方は下記Webサイトを参照されたい。(筆者はICU OBで、入試情報サイトを運営)【https://icu.bucho.net】(「BUCHO」で検索)

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