ICU入試英語リーディングの語彙レベルの研究

ICU(国際基督教大学)入試受験対策として、英語の語彙はどれくらいのレベルまで習得したらよいのか。今回はその検証のため、ICU入試英語の過去問から語彙レベルの解析を行った。ICU入試英語リーディングの過去3年分(2018-2020)をすべてテキスト化し、本文を解析した。

解析には元青山学院教授の染谷泰正氏のWord Level Checkerを使用し、ベース辞書にはSVL12000(語学系出版社のアルクによる語彙レベルの分類)を用いた。
http://someya-net.com/wlc/index_J.html

解析結果は以下の通りである。

SVL12000の語彙レベルは1000語ずつ12段階に分かれている。ICUの入試問題ではこの内、3000語レベルまでに全体の約8割、7000語レベルまでに全体の約9割の語が集約されている。ICUの英語は難しいと言われるが、実際に英文を構成している単語をレベル分けすると、ほとんどが「中級」までの語に収まることが分かる。

比較対象として、センター試験英語の過去3年分をすべてデータ化し、同じく解析にかけてみた。

センター試験の場合、全体の約75%が1000語レベルまで、全体の約9割が3000語レベル以内の出題であった。さらに、6000語レベルまでに全体の94.6%が出題されており、ここまで習得すれば本文の内容理解で困ることはない。

ICU入試と他大学との併願を考える上で、慶応SFC総合政策学部の英語も同じようにデータし、解析を行った。

こちらは1000語レベルまで約69%、2000語レベルまでで約77%、3000語レベルまでで約83%が出題されており、1000語-3000語レベルまでで文章を整えている様子が窺える。また、ICUと同様に全体の90%の語彙が7000語レベル以内である。

以上3つの分析をまとめて、learning curveを描いたのが次のグラフである。

いずれの出題でも「中級」とされる7000語レベルで9割以上の語彙を抑えていることになり、学習効率の上でも中級の語彙までが大学入試の出題のほとんど占めるのである。現実的にはICUで約89%、SFCで約90%、センターで約95%の出題が収束する6000語レベルを習得していれば、相当な英文を読みこなせるはずである。ただし単語帳での6000語の習得が効率的かというと、必ずしもそうではない。

Learning curveは上級になればなるほど鈍化し、効率は悪くなる。一定レベル以上になると語彙力習得に対するリターンは極端に低減する。上記の解析でも4000語以降は相当に効率が悪くなる。更に、単語帳で機械的に語彙を暗記をしていると、暗記のメンテナンスも必要になり、語彙の習得だけに際限なく時間がかかってしまう。

逆に3000語レベルくらいまではLearning Curveが急上昇するので、大学入試で初級から中級とされるレベルの単語帳での語彙の習得はリターンが大きく学習効率が高い。よって中級程度までは単語帳等でやるとして、その後は更に上級の単語帳をやるのではなく、実際に英文を読みながら語彙を習得していった方がよい。

概ねICUの英語リーディングの語彙レベルが分かったところで、実際にICUの過去問をやって、個々の単語を覚えるかどうかという判断したらよいのか。それらの実践的内容は、次回以降のエントリーで触れる。

*注:グラフ上のn/aはSVL12000語レベル外のもの。固有名詞や派生語も含まれるため、必ずしも難度が高い語という訳ではない。